HOIKUSHI JOB JOURNAL

FOCUS

保育運営者の視点

0歳からの積み重ねを大切にたっぷり「寄り添い、受け入れる」

子どもの頃の「小さなお母さん」は、いつしか保育士へ。そして2012年、理事長とともに保育施設を自ら立ち上げます。現在、NPO法人おれんじハウスが運営する保育施設は、横浜市を中心に小規模認可保育園が6園。また、産前産後のお母さんの家事や育児、お悩みを支援する、おれんじハウスままケア事業も行なっています。今回は、統括園長 / 副理事長の中陳亜希子さんに、おれんじハウス保育園に込めた想いを伺いました。

「子どもの気持ちに向き合えている?」悩んだ末に、小規模保育園をスタート

ーはじめに、保育士になろうと思ったきっかけを教えてください。
私には弟が2人いました。4歳と6歳離れていて、両親は共働き。私は弟の保育園の送り迎えをしたり、時にはご飯を作ってあげたり。気持ちとしては「小さなお母さん」で、弟たちのお世話をするのが好きでした。昔から子どもが好きだし、加えて、体を動かすことも好きなので保育士の道を選びました。

ー保育士として、どのようなキャリアを積まれたのですか?
実は学生時代に取った資格は幼稚園教諭免許で、はじめは幼稚園の先生からスタートでした。でも、幼稚園と保育園では、子どもと関わる時間も、関わり方も全然違いますよね。私は“生活をともにする”保育園の方に魅力を感じ、自分で保育士試験を受け、保育士の資格を取得しました。預かり保育、認可外保育園なども経験しましたが、100名ほどの規模の、認可保育園に長くお世話になりました。

ーそこから「保育園を作ろう」と思ったきっかけは?
ひとつには、「小さな保育園を作りたい」という想いが芽生えたことでした。大きな保育園で働いていると、どうしても時間や作業に追われて、いつの間にか「〜しなくちゃ」という気持ちに縛られていました。「何時までに食事を終わらせなくちゃ」「何時までにみんなを寝かせなくちゃ」って…。子どもの気持ちや育ちに、きちんと向き合えているのかな…と悶々とする日々でした。
二つめには、0歳からの過程がいかに大切か、ということを感じ、0歳から保育に関わりたいと思うようになったことがきっかけです。

ー0歳からの過程が大事、というと?
4,5歳の幼児期になってくると、子ども同士の関わり、子ども同士の世界がとても増えてきますよね。それと同時に、自分の気持ちをどう表現するか、人の話をどうやって聞くかが大切になってくるんです。でも、それって突然にはできませんよね。やっぱり、0歳の頃から、自分の想いを聞いてもらえる、自分の存在を受け入れてもらえる。そういう充分な経験が、成長した時に他の人への思いやりに繋がっていくんだと、保育の中で感じたんです。
体だって、同じです。突然器用に動けるようになるのではなく、0歳からの体の土台作り、手先の動きなどの積み重ねがその後につながっていくのだと思います。だから、0歳からじっくりと向き合い、寄り添える保育をやりたいと、「0歳から2歳までに特化」した保育園を始めました。

子どもにも、保護者にも、一人ひとりに寄り添いながら

ーおれんじハウスが目指す保育、特徴を教えてください。
おれんじハウス保育園は、0〜2歳の子どもたちが家庭的な雰囲気で育ち合うことができる小規模保育園です。一人ひとりの子どもに寄り添い、きめ細やかな保育を大切にしています。例えば泣いてしまった子には、少し時間を取って向き合ってあげる。個を大切にする。子どもって、個性がまだ確立されていませんよね。でも、ふと芽生える“個”を見逃さず、大事にしてあげたい。そういうていねいな保育を目指しています。お子さんと同様、保護者の方にもていねいに向き合いたいですね。

ー保護者の方とは、どのように交流していますか?
日々のコミュニケーションはもちろんですが、保護者の方との懇親会も大切にしています。そこで必ず「食育」について取り上げるのは、おれんじハウスの特徴だと思います。例えば、お子さんに提供している給食を皆さんに食べてもらったり、おやつ作りを一緒にしたり。親御さん同士の交流にもなりますし、「その後子どもと一緒におやつ作りを楽しみました」という声や、おかず作りのちょっとした工夫を紹介することで「子どもが残さず食べてくれました!」という声を頂いています。

ー設備面では、何か工夫はありますか?
施設環境により、すべての園ができる訳ではありませんが、例えば西葛西保育園には、絵本を読める小さなスペースを用意しています。他はフローリングなのですが、絵本スペースだけは畳の和空間。ちょっと一人になりたい、気持ちを落ち着かせたい、そんな時のホッと出来る場所にもなっています。それから、キッチンはなるべくオープンカウンターで、お子さんの顔を見ながら調理できるようにしています。お出汁の匂いが香ってきたり、フライパンのじゅ〜っと焼ける音が聞こえてきたり、そこから子どもとの自然な会話も生まれますし、おれんじハウスでは栄養士も子どもと積極的に関わっているんです。

トレード制など、保育の視野を広げる独自制度

ー職員の方に対しては、何か取り組んでいることはありますか?
職員からよく聞くのは「他の園ではどのようなことをしているのか、知りたい」という声です。みんな「自分たちの保育ってどうなんだろう?」「何か新しい取り組みはできないか?」と日々思っている訳ですよね。おれんじハウスは、複数の保育園を運営しています。そこで、1週間ほかの園で働いてもらう「トレード制度」を、2015年から開始しました。実際、環境によりできる保育というのは変わってきます。プールにしても、施設の環境によりベランダでやったり、地域の集会所の横のスペースを借りたり。その時の環境や状況で保育は常に変化しますから、幅広い保育をたくさん経験して、新たな保育の視点を取り入れてもらったら、と思っています。他にも、園長・主任・リーダー・若年中堅など、ステージごとの研修、法人全体会議など個人のスキルアップの機会を多く用意しています。また、忘年会など他園との交流の機会もなるべく持つようにしています。あ、おれんじ会というのもあります!

ーおれんじ会って何ですか?
これはまったく任意の会ですが、お休みの日に何か楽しいことをやりましょう、という会です(笑)。ボーリングをしたり、BBQをしたり、スポーツを楽しんだり。こちらから何かを提供する研修などとは異なり、もっとフラットでカジュアルな、横の繋がりや自発的な交流を大切にしています。他の園の人とも知り合って、いろいろな意見を聞くことで、仕事の悩みに新たな視点が加わったり、役職の関係抜きで交流することで、気持ちがほぐれたりすることもあるかなぁ、と思います。

ーおれんじハウスで働く人は、どんな人が向いていると思いますか?
私たちは保育園の他に、ままケア事業に取り組んでいたり、常に新しいことにチャレンジしています。チャレンジすることに賛同してくれる人、みずからチャレンジできる人が向いていると思いますね。
「保育に正解はない」と、よく言われます。子どもは常に成長していますし、環境にも柔軟に対応して変化していきます。個性も、一人ひとり違いますよね。だから、先生自身も常に変化していく必要があると思いますし、どのように変わっていくべきか、自分で考え行動できることが大切だと思います。

ー最後に、今後の目標をお聞かせください。
「0歳からの、ていねいな保育を実践したい」という想いで、小規模保育園を立ち上げました。その保育が、どのように次に活かされるのか、子どもたちはどう成長していくのか、やはり“次が見たい”という気持ちがあります。次に繋がる3,4,5歳のお子さんの保育も、いつか実現できれば嬉しいですね。

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【団体ホームページ】
NPO法人 おれんじハウス
https://orangebaby.org