HOIKUSHI JOB JOURNAL

FOCUS

保育運営者の視点

すべては、子どもたちと地域のために 目指すは開かれた幼稚園

東急田園都市線・藤が丘駅を降り、坂を少し登ると、小高い丘の上に茶色いレンガ造りの幼稚園が見えてきます。敷地面積は6,000㎡。広々とした園庭から園児たちの元気なはしゃぎ声や笑い声が溢れ、周囲に高い建物のないこの幼稚園では、空が一層広く感じられます。
今回訪れたのは、今年開園50周年を迎える藤が丘幼稚園。「子どもの本質は、50年前も今も変わらない」と言う吉濱美代子理事長に、開園当初からの変わらぬ想い、変わりゆく時代とともに挑んできた新しい取り組みについて、お話を伺いました。

開園50年。体づくりの水泳指導は幼稚園の基盤に

藤が丘幼稚園に伺うと、まず感じられるのは広々とした園庭の開放感かもしれません。「こども達には大きな空の下、風や緑を感じながら、たっぷりと遊んでもらいたい」その想いは、開園当初から変わりません。藤が丘幼稚園では、雨や雪が降らない限り、毎朝全員で外遊びを楽しみます。

「梅雨の晴れ間など、雨が続いた後となると、子ども達は“わー‼”と声をあげて、喜んで外に駆け出しますよ。外に出ると気分が晴れるのは、大人でも同じですね」

開園以来子ども達の体力づくりに力を注いできたのは、毎日の外遊びの他、通年で行う水泳指導にもあらわれています。子どもの健康のために、とエンゼルスイミングスクールを開校したのは幼稚園設立から10年後。以来40年間、週1 回を原則として、専門のコーチのもと全園児が水泳に取り組んでいます。

「1年を通して取り組む、ということも意外と大事ですね。子どもにはリズムが大切なんです。定期的に行うことで、ぐんぐん伸びますし、おかげでインフルエンザなどに罹る子どもも少なく、学級閉鎖になることはほとんどありません。」と吉濱理事長は語ります。

「幼稚園の設立者である私の父は、体を動かすのが好きで、短距離走の選手でもありました。健康な体が健康な心を育む、という想いもあり、それが今の幼稚園の基盤となっています」

もう一つ、幼稚園が長く取り組んできたのは音楽指導です。取材に伺った日も、年に一度の音楽発表会前日ということもあり、遊戯室から歌声が響いていました。専門の先生による指導で歌や楽器に日頃から親しみ、発表会のほか、運動会では鼓笛隊も編成し、迫力の演奏となるそうです。このような大きな取り組みができるのも、300名近い園児を抱える藤が丘幼稚園ならではの魅力と言えそうです。

「あいさつ」と“和”が、良い環境を育む

園内に目を向けると、居心地の良い環境づくりの工夫が随所に散りばめられていることに気がつきます。2階のパティオ(中庭)からは、晴れていれば富士山を望め、廊下の各所にあるステンドグラスからは、やわらか陽の光が差し込みます。階段の踊り場にある、カラフルに色付けされたミラー付きの四角い壁アートは、子ども達の遊び心をくすぐりそうです。

一方、何より心地良い環境を形成しているのは、子ども達や先生方から発せられるあいさつと言えるかもしれません。自発的な“あいさつ”と“聞く力”を大切にする藤が丘幼稚園では、先生方にもまず何より、その2つが求められるといいます。「先生が明るい笑顔で『おはようございます』と、気持ちよく1日のスタートを切ること、これは保育をする上ではとても大切です。そのためには先生同士の“和”がないと子どもたちにとっての良い保育はできません。幼稚園の門の近くに“和”と刻まれた石碑があるのも、そういう想いのあらわれです。」

では、“和”を保つためには、何が必要なのでしょう?

「共通認識を持つというのは、とても大切だと思いますね。何か問題を抱えている先生がいたら、すぐに全体でサポートする。藤が丘幼稚園は、担任以外の人も皆、教員経験を持っているんです。だから共通認識を持ちやすい。また、有難いことに結婚・出産などを機に一度辞めた職員が、子育てを終え戻ってきてくれることも多いです。だから、理念なども共有しやすいのではないでしょうか。」

教職員は、平均して5年以上と長く勤める人が多いのも、設立者のお父様が、辞めた職員とも縁を切らさず、年賀状などで毎年手紙を送り続けていた、そういったことが和に結びついているのではないでしょうか。今年、創立50周年を迎えるにあたり、関わった200名近くの職員に声を掛け集うそうですが、藤が丘幼稚園の“和”は、今もそうして繋がり、広がり続けています。

変わりゆく社会に、変わらぬ想いで応えていく

吉濱理事長は、藤が丘幼稚園を設立当初から間近で見続け、関わり続けてきました。設立されたお父様はどのような方だったのでしょうか。

「8人兄弟の末っ子で、人の面倒を見るのが好きな人。最後まで人のことを気にかけていました。そして、思い立ったら猪突猛進。
地域のために何か貢献できないか。その一心で幼稚園を始めたのです。」

地域のために。その想いは、現在の吉濱理事長にも、変わらず受け継がれています。藤が丘幼稚園は、変化する時代に合わせ、常に子ども達の場を提供してきました。2年保育は3年保育へ、また働く保護者が増えるにつれ平成11年からは自由型預かり保育「ふじっこ」を、平成24年からは横浜市私立幼稚園預かり保育をスタートさせました。ほかにも、2歳児クラスのプレ幼稚園「ひよこ」組の開設、赤ちゃんとお母さんのためのベビールームも開設しています。

「ある時、近所の文房具屋さんで、おばあちゃんがお孫さんらしき赤ちゃんを連れて店員さんに尋ねていたんです。『この辺りで子どもを遊ばせる場所はないですか?』って。考えてみたら、あまりないんですよね。今は母親の孤立も大きな問題となっていますから、少しでも子どもやお母さん達が集える場を提供できれば…そんな想いで、できることを1つ1つやっています。」

ベビールームは、週に1度、専任の先生が在籍した部屋を開放し、一緒に赤ちゃんを見守ったり、少しお話をするだけでリフレッシュして、お母さんたちは帰られるようです。また、1〜2歳のお子さんには、幼稚園が開園している10:00〜12:00の間いつでも、園庭を開放。

「これからも、地域のためにできることは何かを考え、開かれた幼稚園を目指したいです。そして、『この幼稚園に通わせたい』と思って頂けるような幼稚園であり続けたいですね。」

すべては、子どもたちのために。地域のために。最後に吉濱理事長は、笑顔で語ってくれました。




藤が丘幼稚園
http://www.fujigaoka.ed.jp