HOIKUSHI JOB JOURNAL

PEOPLE

保育な人にインタビュー

「今日は楽しかった」の積み重ねで成長していく子どもたちと共に

横浜市南区の小規模保育園「ぽかぽか保育園」。少人数保育ならではの一人ひとりに合わせた保育展開に加えて、母親支援を重視した冷凍・冷蔵母乳にも完全対応している珍しい保育園です。「母乳育児を継続しながら預けることを当たり前にしたい」そんな、ぽかぽか保育園で開園当初から園長を務める千葉明子さんにお話を伺いました。

「ああいう先生じゃない先生」になって、子どもたちを幸せにしたい

ーまずはじめに、保育士になろうと思ったきっかけを教えてください。
私自身、幼少期に保育園に通っていたのですが、実は嫌な思い出ばかりだったんです。保育士に対して悪いイメージしかありませんでした。怖いし、子どもの話も聞いてくれない。「先生は味方じゃないんだ」と本気で思っていました。そんな先生ばかりの保育園で育って、子どもながらに傷ついたり嫌な気持ちになった体験が、「ああいう先生じゃない先生になって、子どもたちを幸せにしたい」という意志につながったんです。


ーあんな先生になりたい!という話は多いですが、その逆は珍しいですね。
どの先生も怖かったというか、とにかく意地悪な人たちにしか見えなかったんです。全く子どもの気持ちを聞いてくれないし、尊重してくれない。全て先生が正しいという世界でした。
例えば、お友達がけんかをしていたので私が仲裁に入ったとき、一方の子が泣きはじめちゃって。すると、そこに来た先生が何も聞かずに「何やっているの!だめでしょう!!」と泣かせた私=ダメな子として強く怒鳴ったんです。
保育士になった今あのエピソードを振り返っても、プロの保育士の姿として、私は認めることができません。
でも、そういった記憶を忘れず反面教師にすることで、何かあるごとに「あの先生だったらこうするだろうけど私はこうやるんだ」と我に返って正しきを追求していけるんです。


ー保育士としてのキャリアはどのようにスタートされましたか?
はじめは保育園ではなく幼稚園に就職しました。将来は保育士になると決めていたので保育士資格も取得しましたが、幼児教育や発達心理にももの凄く興味があって。
結果的に、新卒で入職した幼稚園で6年間お世話になりました。もう毎日楽しかったですよ。一年目から1クラス44人の担任を一人でやらせてもらって、毎日毎日大きな声を出しすぎてホリープ3つ作ったり笑。
結婚を機に退職したのですが、本当に学びが多くてやりがいのある職場でした。

母親支援を続けた先に、理想の保育園が形づくられていった

ー結婚・出産後もやはり復職されるお考えだったのですか?
それが実は私、専業主婦になるのが夢だったんです。私のことを知っている人に話すと「絶対ムリ!」って言われますけど(笑)。実際いざ働かないとなると、それは性に合わないというか、うずうずしちゃうんですね。
それでピアノの先生の資格を取って子どもたちに教えるようになったり、子育てサークルを作って母親支援の活動をしたり。


ーすぐに幼稚園や保育園の現場に戻られたわけではないんですね。
そうですね。保育の仕事にはずっと携わりたいとは思っていましたが、園の先生という仕事にこだわっていたわけではいんです。
むしろ色んな視点で保育や子育て、幼児教育といった世界に関わっていきたいと思っていたので、仕事をしようと思ったときに真っ先に浮かんだのが大好きな歌であり、得意なピアノだったんです。
そしてもう一つ、私の中のキーワードである「お母さん」のサポート。お母さんって本当に大変なんですよね。
私自身4人の子どもに恵まれましたが、はじめはやっぱり不安もありました。でも第一子を出産するときにみやした助産院の宮下美代子院長(ぽかぽか保育園の運営母体であるNPO法人WooMooの理事長)に出会ってまた新しい世界が広がったというか。「お母さんはもっと守られていい」「もっと助けられるべき」そんな考え方に触れて、何より自分自身が救われましたし、この実体験をいかして、私も同じように母親をサポートできるような存在でありたいと感じるようになったんです。
実際に4人4色の子の育児をしていく中で、いろんなお母さんと出会って助けたり、助けられたり、お母さんを支える方々の存在を知るようになって、自然と母親支援を活動として共にする仲間たちが集まるようになりました。

そのような中で、助産院で出産するお母さんが上の子を預けられる場がなくて困っている姿を見た宮下先生が、院内で預かってあげられないものかと。子を産んですぐのお母さんが母乳外来で通院するときにも、まだ生後58日以内で保育園に預けられない。それで、みやした助産院内で母親学級の時の上の子の預かりや一時保育を始めました。その後、保育園に子どもを預けるなら母乳育児をあきらめなければならない、というまた新しい壁に直面して、切れ目のない支援をお母さんたちにしていくためにも、「母乳育児を続けられる保育園を作ろう」となってぽかぽか保育園ができました。
なので、「さあ保育士の仕事をするぞ!」というよりは、日々お母さんの声を宮下先生が聞いてその解決を共にしていたら、いつの間にか保育士の仕事が軸になっていたという感じです。

従来の保育や保育の世界のスタンダードが必ずしも良いとは限らない

ーぽかぽか保育園はどんな園ですか?
まず母体が助産院ということもあって、母乳での育児に対応している点が特徴です。母乳で育てたくても、保育園に預けるとなると、ほとんどの場合が対応してもらえなくて母乳育児をやめちゃうんですね。やめるというか、諦めるしかない。受け入れる保育園側に母乳育児の知識が必要というのももちろんありますが、衛生管理が大変とか、手間がかかるとか、そういった理由の方が大きいんですよね。つまり保育者側の都合であり、お母さんお父さんの気持ちや願いが届かないというのが事実。
先程もお話したように、私たちは自分たち自身が子育てしながら同時進行で保育園をはじめて、母親支援のサークルもやったり、助産院で出産するお母さんの傍にいながらやってきたので、保育者目線だけではなく色んな角度から保育を考えられるんです。これって、当たり前のようで実は現代の保育に抜け落ちていることが多いように思います。


ー保育の世界って少し独特な暗黙ルールみたいなのが多いですよね。
そう。保育士というプロフェッショナルであるならば、常日頃から頭を使わなければなりません。これで正しいのだろうか。こうしたらもっと良くなるのではないだろうか、と。保育者のレベルは日々頭を使って保育としっかり向き合っているかどうかにはっきりと表れます。


ーなるほど。職員の皆がそういった姿勢でいられたら素晴らしいですね。
当園では会議中も日々の会話の中でも「何で?」って質問がとにかく多いです。
それも、常勤・非常勤とか、年齢とか、経歴とか資格とか関係なく。よく「フラットな人間関係」とか言いますが、その極みなぐらい気持ちのよい職場なのが自慢です(笑)。そうじゃないと、建設的な会議もできなければ、良い保育を追求していけないですよね。
全員が何で?って質問を自然に投げかけ合えることで、いつも前提を疑う柔軟な考え方が職員皆の間でも当たり前になっています。
頭を使えていないと「そもそも何でこうしなきゃならないんだっけ?」っていう質問に、理由が出てこないというか。「今までそうだったから」「前の園ではそうしてきたから」「普通はこうだから」って答えちゃうんです。
そんな取り繕った保育観では、本当に子どものことを考えた良い保育なんて絶対にできません。


ー本当にそうですね。職員間でそのように意見を出し合えると、保育の質や内容もどんどん良くなっていくのだと思います。
大切なのは、いつも子ども目線でいること。そのためにも、これまでの保育の世界の当たり前や慣習にとらわれないように意識しています。
何事も、通説が正しいとは思わないんです。この方法って、子どもたちにとって意味あるの?っていつも問い正しながら、昨日よりも今日、今日よりも明日へと保育の質を高めていくことが大切だと思います。


ー最後に、今後の展望や想いをきかせてください。
保育の仕事は幅広い知識や経験が求められる本当に難しい仕事だと思っています。でもその分やりがいがあります。ただ残念ながら、そんなやりがいを失って「忙しくてそこまでやっていられない」「そんなことができたら理想だよね」みたいなあきらめが口癖になっている保育者も多いように思います。そんな気持ちの人が一人でも園にいると、笑顔の数が減ってしまいます。
保育士も調理の先生も職員みんながいつもニコニコしていて、子どもたちが楽しく過ごせている園であることが一番。
「今日は楽しかった」の積み重ねで成長していく子どもたちと、毎日を明るく楽しく過ごしていく。特別な何かをさせたりしてあげたりではなく。
私たちはそうあり続けたいと思っていますし、そんな保育園が世の中にいっぱい増えていけばいいなと思います。


認可小規模保育 ぽかぽか保育園/神奈川県・横浜市南区
http://npo-woomoo.wix.com/pokapoka