HOIKUSHI JOB JOURNAL

PEOPLE

保育な人にインタビュー

保育士資格を活かして園の食育と保育の架け橋に

保育士の資格を持ちながら、保育ではなく給食・食育の面から園の子どもたちの成長を支援する井上さん。2つの小規模保育園を行き来しながら保育と食育を結びつける取り組みを取材しました。

「まさにこれがやりたかった」と目覚めた感覚

ーはじめに、保育園の給食に携わるようになったきっかけを教えてください
もともと料理は好きだったのですが、自分の子どもたちが小さいときは、食にそこまで手をかけてあげられなかったというか、忙しくて手が回らなかったという気持ちがずっとあったんです。とにかく手軽さ優先で簡単なものをつくったり、出来合いのもので済ませてしまったり、当たり前のように市販の出汁を使ったり…。そんな中で、子どもが大きくなって少し余裕ができて改めて、ご飯の大切さや家族が集まることの大切さを感じるようになりました。次第に食や料理で何か自分もできないかと思うようになり、本格的に食育や料理の勉強をはじめたんです。食育の資格を取り、料理教室のアシスタントをやらせてもらうようになって、少しずつ知識と経験を増やしていきました。
保育士の資格も持っているので、保育園での給食にも興味があったのですが、これまでの知識や経験を活かしてさらに高めていきたいと考えていたタイミングで、たまたまご縁に恵まれて、今勤めているといろきっず中山保育園の調理の仕事を手伝わせてもらうようになりました。目指したというよりは自然な流れで保育園の給食に携わることになりましたが、今では「まさにこれがやりたかった」と目覚めた感覚です笑。周囲からも導かれたみたいだね、とよく言われます。


ー今はどんなお仕事を担当されていますか?
0〜2歳児が通う2つの小規模保育園の献立作成、食育計画から進捗確認、給食・おやつなど調理全般を担当しています。
献立については、園の保育理念ときちんと結びついたものになるように、園長や保育の先生と毎月何度も打ち合わせを重ねて作成しています。その上で、園児一人ひとりの食の進みやご家庭の意向を踏まえて食育計画を立て、毎月振り返ったものを翌月の計画に反映しています。

子どもたちの様子や園での生活の流れを理解できていてはじめて良い給食が出来上がるという思いがあり、週1回以上は各園の調理に実際に入らせてもらって、調理から配膳までの流れや衛生面のチェック、調理作業効率の向上にも気を配り、常により良い給食運営ができているか意識して取り組んでいます。


ーすばらしいですね。給食の食材や献立について、特にどのような点にこだわっていますか?
まずは安心・安全。子どもたちが安心して口にできることが大前提になります。そして、食育にもつながることですが、子どもたちがいずれ自分自身で安全な食材を選べるようになってもらうために、添加物は使わずに天然だしで味付けをしたり、野菜の色形や素材の味を生かしたメニューを立てたり、安全な食材の「確かな味」を大切にしています。

また、何よりも子どもたちが食を楽しめることが大事ですので、食感、噛み具合、形、色にも工夫を凝らして、五感でワクワク楽しめるような給食作りを心がけています。あとはその日の保育のカリキュラムと連動させて旬の食材を給食で使用したり、何だろう?と思うような変わった形の料理を加えてみたり、子どもたちに口の中で色んな体験をしてもらえるように意識しています。

自ら保育にも実際に関わることで、より子どもたちに合わせた給食が作れる

ー何をやるにも楽しいかどうかって大事ですよね。
そうですね。この子たちが生涯に渡り、おじいちゃんおばあちゃんになっても食生活を楽しめるかどうかは、この数年にかかっていると思うんです。
それは人生においても大切な基礎になりますので、その責任と、意味の大きさを常に感じながらやりがいをもって取り組んでいます。
「食べることを楽しむ」というのを私たちの立場から何ができるか。栄養面はもちろんですが、将来を見据えた子どもたちのこの大切な時期に、どうやって関われるのかを重要に考えています。


ー保育士の資格もお持ちとのことですが、保育に入ることもあるのですか?
はい。時々ですが、保育の先生としてというよりは、子供たちの顔も見て、個性も感じ取って調理や食育計画に生かすのが目的です。保育と食育や給食を切り分けて考えることはできませんし、私自身が保育にも実際に関わることで、その分気持ちも入ります。保育士の資格を持っているからこそ、この感覚、考え方にたどり着けたと思っています。


ー保育の先生も、保育を分かっている方が給食や献立を作ってくれるとなると頼もしいですね。
皆さん協力的でいてくださるので、本当にやりやすいですね。全ては子どもたちのため、一人ひとりのため、という園の理念がありますので、皆真剣にどういうのがベストなのかを考え合えています。


ーアレルギー対応や離乳食もあるかと思いますが、何か難しいことはありますか?
そうですね。アレルゲンの除去にしても、離乳食にしても、その子がどんな子どもでどんな状況なのかで変わってきますので、個別に細かく対応していくことに尽きると考えています。
離乳食でいうと、食の進みは家庭での状況とも密接なので、どう保護者と連携できるかも重要になってきます。
お母さんが忙しくてお家でなかなか進められないこともありますが、その足並みと園での食事を合わせながら、無理のない範囲で調整していきます。
保護者の方にも、単に「ご家庭でもこうしてください」「こうした方が良いですよ」という発信ではなく、「こんなものを作ると取り分けて離乳食も一緒に作れますよ」とか、ちょっとした楽チンだけどおいしいメニューをご提案することもあります。保護者の方と都度そのようなコミュニケーションを取ることで、多少なりともご家庭での負担軽減にもつながり、より一緒にその子の成長に関わっていける感覚が持てるようになります。

園の給食の時間がさらに楽しくなるのが一番

ーどんな時にやりがいを感じますか?
子どもたちが美味しい!と感じてくれている顔を、すぐその場で見れるというのはやはり格別の喜びですね。そして、自分が作ったものを目の前で口にして成長の基礎そのものになっているという事実自体が、その子の大切な将来に関わっているという実感であり、大きな責任とやりがいを感じます。プレッシャーはありますが、そのプレッシャーを自覚しているからこその安心・安全な給食提供からそれることがない。その行き来ですね。


ー他の調理の先生と情報共有は工夫されていますか?
小規模保育園ですが、2園あり、職員の人数も増えてきたので、情報の共有や伝達はこれまで以上に重視して取り組むようになりました。日々の連絡や共有事項の伝達は連絡ノートで行い、毎月の給食会議では主に、より良くするための議論の場として、個々に感じている課題や問題点を出し合います。会議の場って、なかなか意見を言いにくいこともありますよね。
でもそういったことを躊躇していては折角の会議も意味がないので、参加者全員がきちんと考えを出し合えるような場、雰囲気でやれるように意識しています。


ー今後の展望を教えてください。
といろきっずの2つの園を、もっともっと盛り上げたいという想いです。より園に適した給食を、より園の子どもたちに適した献立をもっともっと増やしていきたいですね。あとは、お母さん向けの料理教室や、子どもと一緒に学べるセミナーのようなイベントも開催していきたいと思っています。毎日の給食にじっくり丁寧に取り組みながら、さらに全体的なレベルアップを目指していくイメージを持っています。でも、まだまだ私自身がもっと勉強したいという感じですね。パネルシアターだったり、保育に取り入れられる技術や作り物のバリエーションも増やしていきたいです。とにかく園の給食の時間がさらに楽しくなるのが一番です。

あとは、食育の概念で「選食能力」といいますが、これを食べると体が元気になるとか、緑の物を沢山食べるとお通じが良くなるとか、将来自分で選んで食事を取る能力に結びついていくような取り組みを深めていきたいですね。
食材の名前とか、季節でいえばどんな時期にどんな旬なものがあるのか、とか。
とにかくやりたいことが沢山あって尽きないですね笑。

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